2014年11月23日日曜日

環境省の「指定廃棄物を薄めて拡散する」という亡国の施策

 福島事故から3年9ヶ月も経つというのに、未だに放射能対策に関する基本的な間違いを繰り返している環境省が、またしても、恐ろしい施策の検討を始めた。現在、隔離保管されている「指定廃棄物」を薄めて一般廃棄物と同様に処理しようというもの。突き詰めれば、原発の放射性廃棄物だって、薄めて全国にばらまけば問題ないという恐ろしい施策につながる。日本に住めなくなる日は近い。



【引用】
クローズアップ2014:放射性廃棄物問題 濃度下げ処分案、難航 毎日新聞 2014年11月23日


  東京電力福島第1原発事故で生じた放射性物質を含む廃棄物の処理問題は各地で混迷の度を深めている。事態打開のため、望月義夫環境相は今月11日、最終処分という方法以外に、濃度の低減を待って一般廃棄物として処分できるか検討する方針を示した。既に岩手県一関市と埼玉県が一般廃棄物としての処分を試みているが、地元住民が納得しないなど前途多難だ。最終処分場の候補地からは「解決策を衆院選の公約に示してほしい」との声が上がる。
 ◇「一般ごみと混ぜて焼却」 「低減待ち仮置き」

 放射性物質汚染対処特別措置法は放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超す「指定廃棄物」を国の責任で処理すると定める。ただし、例外もある。焼却前の場合、自治体が申請しなければ指定廃棄物にならず、放射線防護措置など厳しい保管基準が適用されない。一関市は申請をせずに一般ごみに混ぜて燃やして焼却灰の濃度を下げ、一般廃棄物として処分する方針だ。

 岩手県では一関市など3市町が、除染対象の「汚染状況重点調査地域」になったが、8000ベクレルを超す廃棄物は一関市だけが1115トン抱え、このうち焼却灰475トンは国が最終処分する指定廃棄物になった。残る640トンは稲わら、堆肥(たいひ)、ほだ木。稲わらの場合、平均的な濃度は1キロ当たり2万3000ベクレル。一般ごみと一緒に燃やせば焼却灰が8000ベクレルを下回り、一般廃棄物として処分できると見込む。「混焼」が進めば国の責任で最終処分する量が減り、環境省も了承した。市は今年4月、環境省の委託で、同市狐禅寺(こぜんじ)地区内の「一関清掃センター」近くに仮設焼却炉を建設すると発表。焼却灰は北隣の舞川地区の最終処分場に埋設する方針を示した。

 これに対し、地元住民は反対署名活動などを展開。市側と地区住民は2000年、清掃センターを建設する際に「これ以上は焼却施設を設けない」との覚書を交わしており、地元の男性(60)は「約束をほごにする市側の態度には不信がいっぱいだ。健康に影響はないと説明するが信用できない」と憤る。処分方法が決まらず、汚染されたほだ木約5万本を保管する地元シイタケ生産組合の菊池俊秋組合長は「いつまで保管するか市から説明がない」と途方に暮れる。

 一方、埼玉県は仮置きを続けて濃度が自然に下がるのを待つ。1キロ当たり8000ベクレル超の汚泥焼却灰113トンを下水処理施設「荒川水循環センター」(戸田市)で保管するが、付近住民からは「早く移してほしい」と不満の声も上がる。

 県下水道管理課によると、現在の枠組みでは指定廃棄物になると県内に最終処分場を造ることになる。場所の選定で市町村に負担をかけるため、指定廃棄物の申請をしないという。基準を超す焼却灰は12年6月に454トンあったが、徐々に濃度が下がり、今年5月の調査で113トンに減った。半減期はセシウム134が約2年で同137は約30年だ。

 ただし、基準を下回っても、ただちに引き取ってくれる業者はいないのが難点だ。同県は焼却灰の最終処分を民間業者に委託しているが、引き取る条件は4000ベクレルを下回ること。現在保管している焼却灰のうち最も高い濃度は1万1300ベクレル。このまま保管して8000ベクレルを下回るのは5〜6年後とみているが、4000ベクレル以下になる時期はまだ試算していない。

 同センターの近くに住む主婦(50)は原発事故後の約1カ月間、小学生の娘2人に登下校時にマスクをさせ、洗濯物は室内に干した悪夢を思い出す。「持って行く場所がないのは理解できるが、早く出してほしい」と訴える。焼却灰を引き取る業者について、同課の担当者は「県外」とのみ説明し「それだけデリケートな問題」と話した。埼玉県では他に、秩父市が基準を上回る汚泥焼却灰19トンを保管し、今後の方針は白紙だ。【和泉清充、浅野孝仁、奥山はるな】

 ◇衆院選から置き去り 各党、具体案示せず

 環境省は指定廃棄物が発生した12都県のうち、自前の処分場が逼迫(ひっぱく)している宮城▽栃木▽群馬▽茨城▽千葉の5県で最終処分場を新設する計画だ。地元自治体との協議は暗礁に乗り上げている。衆院選に向け、地元住民からは各党の論戦を期待する声も上がっているが、具体策を持たないのは与野党共通のようだ。

 指定廃棄物を各都県内で処分することを定めた放射性物質汚染対処特措法は民主党政権時代の2011年に成立。環境省は12年9月、栃木県矢板市と茨城県高萩市を最終処分場候補地に選んだが、一方的な選定は地元の猛反発を浴び、白紙撤回に追い込まれた。同12月の衆院選では、民主の失策の一つとして他党が攻撃材料にするなど注目を集め、矢板市の候補地に国会議員らが相次ぎ視察に訪れた。

 この経験を踏まえ、安倍政権は有識者会議で選定基準から見直し、5県で全ての市町村長を集めた会議を重ねるなど、合意形成へ段階を踏んできた。環境省は今年、建設に向けた調査候補地を宮城、栃木両県で示したが、自治体の反発で調査に入れず、他3県は候補地をまだ示せていない。

 栃木県では候補地に選ばれた塩谷町から「福島県へ運んで処分すればいい」という「福島集約論」まで出ているが、望月環境相は特措法の方針を見直すことはないと明言。一方、宮城県の自民県議からも県外処分を求める声が上がっている。

 昨年7月の参院選では解決に向けた具体策を各党が示せず、争点にならなかった。塩谷町の農業の男性(64)は「各党の主張から福島第1原発事故のことが消えている気がする。見て見ぬふりをしているのではないか」と不満を漏らした。【阿部周一、藤田祐子】
















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